いまの、この世界が消え去ってしまっても -第1話-



目次

序章

ボクは小学六年生、今は「昭和時代末期」
この物語はここからスタートする。

私は、西暦2048年から来た。
来たといっても、
物質を送るほどには科学は進歩をしていない。
もちろんクルマは空を飛ばないし、月に都市もない。
要するに、未来というほど外観上はほとんど変わっていないのだ。

科学の進歩は物理的にモノを動かすことには、
なかなか進まないのだが
脳科学的には西暦2042年のある発見により
急速に発展した。

その発見により、
私は元の西暦2048年から精神というか記憶だけが
当時「西暦1983年(昭和58年)」、小学六年生だった頃の自分に送り込まれてきたのである。

送り込まれたなどと言うと、
私は何かのエージェント? ターミネーター的な何か?
ご期待にそえず申し訳ないが、
私は只のおじいちゃん「量産型おじいちゃん」である。

それを踏まえてこの物語を読み進めていただきたい。

ボクは小学六年生 -はじまり-

気持ちが悪い、吐き気とめまいに襲われながら
目が覚める。
見覚えのある懐かしい木製の天井と、
傘付きの丸型蛍光灯

(これは夢じゃないよな・・)

確かめようにも、夢の中でも痛みを感じるような気が
することを
経験上知っている私は
「昭和の漫画」のように頬をつねってみたりはしない。

もうろうとした意識の中で考える暇もなく
けたたましく階段を上る音と、
母親の怒声が襲いかかる。

「早く起きな! 遅刻するよー!」

引っぱがされそうになる布団にしがみつき

「気持ち悪い・・」
これは私が当時、学校を休みたいときに使う常套手段である。

「またぁ?、気持ち悪いんか・・」
母親の声が少し穏やかになる

よしっ、もうひと息だ!
わざとらしく呼吸を ゼエゼエ させてみる。
「そんなら、休みゃあ」
(よっしゃー!)布団に潜り込んで表情を隠さないと
私はすぐ顔に出るタイプなのだ。

枕元に洗面器を用意すると、母親は学校に電話するために一階に降りて行った。
当時の私はよく嘔吐する子だったので休みたいときは、いつもこの方法である。

忘れているかもしれないが、
私は未来から「トリップ」して来たのだ。
トリップ早々で学校に行くのは、
少々ハードルが高すぎる。

まずは現状を把握しなければならない・・
息をひそめて母親が仕事に出かけるのを待つ

全集中で玄関の閉まる音に耳をすます。
「全集中?」何十年も前に流行ってから、いまだに使う事がある。

よしっ、行動開始・・・
する前に尿意をもよおしていたのだった。
母親が出かけるまでの間、我慢しっぱなしだったので、
あわててトイレに駆け込む。

「なんじゃ、こりゃぁ! かぶっとるやんけ」
うまく方向が さだまらん

まず、この体に慣れることが先決だ
いかに自分の体とはいえ半世紀ぶりである。

こんな事でつまずいている場合ではない・・
私は、本当に未来を変えるコトができるのだろうか?

「そう、私は未来を変えるタメここに来たのだ」

だがまず、状況を確認しないと

一階に下りて新聞を見つける
「昭和58年11月25日(金)」
なんてラッキーなんだ、明日はお休み・・・・
「じゃないぞっ!」
この時代の土曜日は午前中に3時間だけ授業がある

ダメだ、もっと情報を集めないと

自室に戻り、学習机をあさると「6年3組」と書かれたノートが出てきた
明日からは学校に行かなければならない
学校までは集団登校で たどり着けても
クラスの場所が分からない
アルバムをめくりクラス集合写真を探す
学校に着いたら、
この中の誰かの後をつけて教室に入ろう

席は? 席はどうする? めまいが酷くなってきた
意識が遠のく

アレッ、いつの間にか眠っていたようだ
「変な夢を見た気がする」
ボクは未来からタイムスリップしてきて・・
何だかすごくあせってて・・
「イヤな夢・・・・」

「違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う」
夢じゃない、今何時だ!時計を見る

6時半、「グ~」お腹が鳴る
そう言えば朝から何も食べてない

とりあえず夕飯食べてから考えるか・・・

けたたましく階段を上る音と、
母親の怒声が襲いかかる。

「今日は学校行かなあかんでね!」

「マジか!!!」

次回に続く



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